2013年3月1日金曜日

連載シリーズ「ほんやマ.のほん」第44回

子供たちの心のひろば

立ち読み歓迎の貸本屋
春日部の”ほんやマ.”

「おじちゃん、このほんかして」
読みたい本の見つかった子供は目を輝かして、
ふろやさんの番台のようなところに座っている
おじさんのところにやってきます。
「はじめて?」
「うん」
「それじゃ、ここに名前と住所を書いて」
「かんじでかくの」
「ひらがなでもいいよ」
「ほんやマ.」のおじさんとのやりとりが続きます。

おじさんの名は田中雅規。22歳の若者です。
昨年の10月に3年までいた大学をやめ、ここ
埼玉県春日部市大場で貸本屋をはじめました。
店の名前は、自分の名前の頭文字をとって
「ほんやマ.」。



毎日、200人位の子供達が、学校が終わると
ここに集ってきます。子供達は、狭い店に
ひしめきあいながら「ダメおやじ」「あしたのジョー」や、
SF小説などに読みふけっています。
ある立ち読み常習の子は日曜日に、朝来て、
昼は食事に帰り、午後また来て延々5時間も
立ち読みをしていくそうです。
「ほんやマ.」は立ち読みのできる店なのです。
「本をただ読みされたうえ手垢で汚され、そのうえ
立ち読みする子は図々しいのが多いときているから
営業妨害もはなはだしいけれど‥‥
うちに持って帰ると叱られる子もいるだろうし‥‥」
「ほんやマ.」では、20円~30円で1さつの本を
3日は借りられるのです。
子供達はお金がなくてもここにやってきます。
ある子供のおかあさんは、「ほんやマ.」に行って
いるなら安心だといっています。
でも彼を手伝っている母親の貞子さん(51)は
「ここに来ている子供達みんなが本を
借りてくれたら‥‥」とつぶやいていました。

彼は学生時代、全国の古本屋をまわって歩きました。
そして古本屋のおやじさんからいろいろ話しを聞いて
「一生やってもあきない仕事だ」
と思うようになったといいます。
それから2年、夜はビルの掃除、休みになると建具屋で
働くなどして、古本を買い集め準備してきたのです。
「漫画本1冊が、子供を変えることもある。漫画と
いうものを通して、一緒になって子供の心のひろば
をつくれたら‥‥」
店のまわりは、青い田んぼの田園風景が広がっています。
店のまわりには子供達の乗ってきた自転車が並び、
橋のランカンに腰をかけて本を読んでいる子もいます。
ここには町の本屋にはないなにかがあるようです。


商工新報 1974年(昭和49年)8月1日号掲載
(写真は、ほんやマ.のオリジナルに差し替えました。)


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