2012年7月28日土曜日

連載シリーズ「ほんやマ.のほん」第13回

きょうは 何して 遊ぼう

「おじちゃん、この本貸して」
借りたい本の見つかった子どもは、その本を持って勇んで
やってきました。貸本屋のおじさんが、初めて借りるのかと
聞くと、子どもはうれしそうに言います。
「うん、初めて」
おじさんは、机の下からなにやら帳面のようなものを出して
きて、それをおもむろに広げると、番号の書いてある所を
指さして、ちょっぴり偉そうに言います。
「ここに、名前と住所を書いて」
子どもは一瞬何のことかと思い、その帳面の指さしてある所
を眺めていましたが、そのうちひとりで納得すると、心配そう
に聞き返しました。
「漢字で書くの?」
「ううん、ひらがなでもいいよ。でも書けたら漢字で書いてよ」
そう言われてほっとした子どもは、ゆっくりと書き始めました。
「ええと、名前はたけさと一。そいで住所はと‥‥おじちゃん
何て書けばいいの?」
また心配そうに聞きます。住所をどう書いたらいいのか、
わからないのです。貸本屋のおじさんがどこだと聞くと、ポツリ
と一言。
「だんち」
「それなら、武里団地の何番の何番の何番て書けばいいよ」
そう聞くと、なあんだそれなら簡単だというような顔つきで、
再びボールペンを握りしめました。
「だんちの○の○の○。書けた!」

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ようこそ!街のふるほんや『本のある暮らし』へ Part.36

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