何10円か出せば漫画の本が読めるということを
どこからか聞いて、貸本屋というものに生まれて
初めて飛び込んだ子どもが、いま自分の力で
読みたい本を借りることができたのです。初めて
本を借りる時に、身分証明書が必要だったり、
保証金をいくらか支払わなくてはならなかったり、
会員証という、貸本屋にとっては便利な、子ども
にとってはなんとなく優越感をくすぐるような札を
買ったりすることがなく、いつもの駄菓子屋で
お菓子を買うような気持ちで、そう名前を書いたり
ちょっぴり面倒臭かったけど、とにかく親の力を
借りなくて漫画本を借りられたのです。
子どもが本を買うといっても、自分の小遣いだけ
ではなかなか買えません。ましてそれが漫画本
だったらおかあさんは買ってくれっこありません。
なにしろおかあさんの買ってくれる本ときたら、
学習雑誌に、文部省推薦とかいう童話や、伝記
ばっかりです。しかもそういった本は、全然読む
気がなくたって、毎月キチンキチンと本屋さんが
持ってきてくれるのですから。おかあさんは、それ
らの本を手にしては、車の排気ガスのように、
タメになるから読みなさいという決まり文句を吐き
出しながら、子どもに迫ってくるのです。
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