2013年2月15日金曜日

連載シリーズ「ほんやマ.のほん」第42回

いままで、これで買える小僧は、時々、こんな風にして
何も買わずに帰ってしまっていたのですから
「これいくら」
「10円。」
「かえないや」と。

ほんやマ.のおじさんも、はじめのうちは、5円しか持って
こなかったのかなと思って気にもしていませんでしたが、
ある時、チョコレートを持って、これいくらと聞かれて、
20円と答えた時、買えないやと言ってたのに、今度は、
ラーメンを持ってきたのです。50円のラーメンは買えない
なと思いながら、差し出された、左の手のひらを見ると、
なんと、50円玉が1個光っているではありませんか。
あれっと思いながらも、スプーンを渡して、その50円玉を
受け取ったことがあります。
ほんやマ.のおじさんには、だんだんわかってきました。
これで買える小僧の、お金に対する考え方が。

     ☆     ☆

これで買える小僧は、いまにも目を回して、ひっくり返り
そうです。あの日、これで買える小僧の、お金に対する
考え方は、すっかり変わってしまったのです。いままで
信じていた世界はガラガラと音をたてて、崩れ落ちて
いったのです。
これで買える小僧は、いつかおつり小僧になってゆきます。
おつり小僧にならずに、欲しい欲しい小僧になる子もいます。
そして、多くの子供たちが、そのどれにも属さずに、育って
ゆくと、貨幣のつくりあげた価値観、ものの値段が認められ、
お金の社会が維持されてゆくようになるのです。
ー100円玉というのはすごいんだ。10円玉10個と同じ
なんだもの。いつも使っているおもちゃじゃない、紙の
お金は、もっとすごいんだからー
ほら、今日もまた、おつり小僧がやってきました。










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ようこそ!街のふるほんや『本のある暮らし』へ Part.36

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