1月の雪の降った日、白い猫が迷い込んできて、そのまま
ほんやマ.に居着いてしまいました。小さくて白いので、
チロと名付けました。
この猫が大きくなったら、オロになるのかと言うと、そうでは
なくて、やっぱりチロのままなのです。
こんなことを思っていたら、2月の、この日も雪が舞って
いました。チロは居なくなってしまったのです。
☆ ☆
ほんやマ.に居着いて次第に周りの環境に慣れてきたチロは、
カーテンに飛びついたり、店に出て子供たちと遊んだり、
日に日に、ほんやマ.を我が棲家と飛び回るようになりました。
そのうちに、ひとりで、ほんやマ.が閉まる少し前に散歩をする
ようになりました。何処へゆくのか、閉まる頃になるとあわてて
駆け込んでくるという、日課が続くようになりました。昼は、
向かいの春駒さんの家に上がり込んでは、コタツに入れて
もらっていたようです。
いつものように、夜の散歩に出掛けたチロが、10時を過ぎても
11時になっても、そしてとうとう、ほんやマ.には帰ってこなかったのです。
ほんやマ.を我が物顔に飛び歩いていた、あのチロのことですから、
きっと元気で生きていることと思っています。
☆ ☆
風呂から上がると、待ちかねたぞという顔つきで、飛びついてきます。
早く寝ろ ということらしいのです。そのくせ2階に連れてゆくと、
ひと暴れしないことには、おとなしくなりません。いつの間にか
肩口から入り込んで、人の腕を枕に、ゴロゴロ。寒さのきつい時は、
足の方まで潜り込んで眠ります。
チロの大好きなサンマを焼いていたら、ガスレンジに飛び上がって
ヤケドしそうになったことや、叱られると、一目散に階段を駆け上がって、
呼びにゆくまで、2階でじっと座っていたことなど、短い間でしたが、
すてきな思い出を、ほんやマ.にたくさん置いていってくれました。

なんにしても、チロはほんやマ.の猫ではなくて、
ほんやマ.ではチロと呼ばれていた、一匹のメス猫なのです。
第31回に戻る⇔第33回につづく